主にサークル小麦畑様のゲーム「冠を持つ神の手」の二次創作SS用ブログです。
他にも細かいものを放り込むかもしれません。
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トッズ愛情A後。
ちゃりりーん、と軽い音が鳴った。そのあんまりの軽さに、トッズとレハトは顔を見合わせる。
二人の目の前には、逆さにして振ったカラの財布。
それからたった三枚の銅。
「わー、なにこれー」
「わー」
おどけて声を出しながらそれをとりあえず綺麗に並べて、トッズはすぐにため息をついた。
「どうしたもんかなあ、相当節約してたんだけど」
「……ご、ごめん、私の篭りのせいで」
「ん? レハトは気にしないでいいの。俺の甲斐性が足りなかっただけ」
「甲斐性の問題かなあ」
そう。二人は今まさに路銀が尽きようとしているのである。
勿論それなりの金額を用意はしていたのだ、トッズは蓄えを出来るだけ持ってきていたし。
計画上、レハトはさすがにあれこれと持ってはいけなかったものの、一番高価そうな耳飾をくすねた。
耳飾は適当な値段で売り払って、蓄えは少しずつ崩して。
それでも、道中の田舎で篭り部屋にまぎれこませてもらう間、ちょっと掴ませたおぜぜが痛かった。
「なんかで稼がないといけないかもねー、これだと」
「また商人さんする?」
「それがよさそうかな、問題は元手ね元手」
お金を縦に積んだ様子に、その薄さに、また二人してため息をつく。
やりくりしながら逃げてもよかったのだが、何よりも早く王城から遠ざからなければいけなかった。
南へ、南へ。
そうしてようやく、ディットンに近い場所までやってきたのだ。
勿論、そこが終着地点ではなく、さらに二人が目指すのはその先だが。
「まあ、このトッズさんがなんとかしてあげるから」
笑うトッズを見て、レハトは一度顔を伏せる。確かに、トッズならなんとかするだろう。
いかがわしい手段を使えば、にぎわった街道沿いの街ならばすぐに金を得ることはできる。
だが、レハトは首を横に振ってから立ち上がった。
「大丈夫、私のほうがなんとかする!」
「えええええ!?」
「トッズ、楽器とかできる?」
「笛と十二弦琵琶くらいなら多少はできるけど、なに? あっ、旅芸人ごっこ?」
「ごっこじゃないよー、それでおひねりもらうんだから」
「なるほどねえ」
トッズは感心した。確かに芸ならば元手はさしてかからない。だが顔が売れるのはいただけない。
特にレハトは額の徴を隠してはいるものの、その整った顔立ちやきらきらと輝く瞳、ふんわりと顔を縁取る柔らかい髪、しなやかに伸びた手足に、分化直後にしては大きめの以下略などと目を引く容姿だ(※惚れた欲目が含まれます)
だからこそではあるかもしれないが、それで騒動になったらたまらない。
さらに、安く春を売るような女と勘違いされたりしたら、さすがにトッズの拳が火を噴くだろう。
とはいえ財政は逼迫。レハトは言い出したら聞かない。
……仕方ない。この場をしのぐだけに。うん。
頷いたらレハトはぱっと笑って飛びついてきた。その反応だけでももうけものだろう。
他の芸人たちもいる広場の一角にこそこそと陣取り、トッズは銅一枚で値切りまくってせしめた横笛を構える。
曲の打ち合わせはすでにすんでいる。北の、壁沿いの村に伝わる農業歌だ。
最果ての田舎くさい音楽は、かえってここらの人間には耳に新しいだろう。
さして難しい曲ではないために、一度か二度練習するだけでだいたい吹けるようになる。
「レハトって歌も上手いのー? なんでもできちゃうなあ」
「まかせて。村では一番だったし、あのタナッセを凹ませられたんだから」
「うわ、懐かしいお名前だことで」
今頃どうしてるのか定かではない王息殿下の名を呼んでくすくす笑えば、レハトが立ち上がる。
人でごったがえす街道の広場で、今はまだ彼女に注目する者はいない。
笛の音に続いて、柔らかな歌声が流れ出すまでは。
二人の目の前には、逆さにして振ったカラの財布。
それからたった三枚の銅。
「わー、なにこれー」
「わー」
おどけて声を出しながらそれをとりあえず綺麗に並べて、トッズはすぐにため息をついた。
「どうしたもんかなあ、相当節約してたんだけど」
「……ご、ごめん、私の篭りのせいで」
「ん? レハトは気にしないでいいの。俺の甲斐性が足りなかっただけ」
「甲斐性の問題かなあ」
そう。二人は今まさに路銀が尽きようとしているのである。
勿論それなりの金額を用意はしていたのだ、トッズは蓄えを出来るだけ持ってきていたし。
計画上、レハトはさすがにあれこれと持ってはいけなかったものの、一番高価そうな耳飾をくすねた。
耳飾は適当な値段で売り払って、蓄えは少しずつ崩して。
それでも、道中の田舎で篭り部屋にまぎれこませてもらう間、ちょっと掴ませたおぜぜが痛かった。
「なんかで稼がないといけないかもねー、これだと」
「また商人さんする?」
「それがよさそうかな、問題は元手ね元手」
お金を縦に積んだ様子に、その薄さに、また二人してため息をつく。
やりくりしながら逃げてもよかったのだが、何よりも早く王城から遠ざからなければいけなかった。
南へ、南へ。
そうしてようやく、ディットンに近い場所までやってきたのだ。
勿論、そこが終着地点ではなく、さらに二人が目指すのはその先だが。
「まあ、このトッズさんがなんとかしてあげるから」
笑うトッズを見て、レハトは一度顔を伏せる。確かに、トッズならなんとかするだろう。
いかがわしい手段を使えば、にぎわった街道沿いの街ならばすぐに金を得ることはできる。
だが、レハトは首を横に振ってから立ち上がった。
「大丈夫、私のほうがなんとかする!」
「えええええ!?」
「トッズ、楽器とかできる?」
「笛と十二弦琵琶くらいなら多少はできるけど、なに? あっ、旅芸人ごっこ?」
「ごっこじゃないよー、それでおひねりもらうんだから」
「なるほどねえ」
トッズは感心した。確かに芸ならば元手はさしてかからない。だが顔が売れるのはいただけない。
特にレハトは額の徴を隠してはいるものの、その整った顔立ちやきらきらと輝く瞳、ふんわりと顔を縁取る柔らかい髪、しなやかに伸びた手足に、分化直後にしては大きめの以下略などと目を引く容姿だ(※惚れた欲目が含まれます)
だからこそではあるかもしれないが、それで騒動になったらたまらない。
さらに、安く春を売るような女と勘違いされたりしたら、さすがにトッズの拳が火を噴くだろう。
とはいえ財政は逼迫。レハトは言い出したら聞かない。
……仕方ない。この場をしのぐだけに。うん。
頷いたらレハトはぱっと笑って飛びついてきた。その反応だけでももうけものだろう。
他の芸人たちもいる広場の一角にこそこそと陣取り、トッズは銅一枚で値切りまくってせしめた横笛を構える。
曲の打ち合わせはすでにすんでいる。北の、壁沿いの村に伝わる農業歌だ。
最果ての田舎くさい音楽は、かえってここらの人間には耳に新しいだろう。
さして難しい曲ではないために、一度か二度練習するだけでだいたい吹けるようになる。
「レハトって歌も上手いのー? なんでもできちゃうなあ」
「まかせて。村では一番だったし、あのタナッセを凹ませられたんだから」
「うわ、懐かしいお名前だことで」
今頃どうしてるのか定かではない王息殿下の名を呼んでくすくす笑えば、レハトが立ち上がる。
人でごったがえす街道の広場で、今はまだ彼女に注目する者はいない。
笛の音に続いて、柔らかな歌声が流れ出すまでは。
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