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主にサークル小麦畑様のゲーム「冠を持つ神の手」の二次創作SS用ブログです。 他にも細かいものを放り込むかもしれません。
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レハトと短剣。

BGM:segment 8 root3 boss/hellsinker.


その日は朝から雨で、グレオニーが正門警護でもしているのかもしれないとレハトは思った。
寝台の上でぼうっとしながら、ローニカとサニャがあれこれ世話を焼きに来るのを待つ。
勝手に色々することはむしろこの城では推奨されておらず、そこは常々変だと思っていた。
着替えて食事をとるくらいなら、一人でも出来ることなのに。
雨が降り続けるのに、外を眺めながらそっと手を枕の下にやった。
かちりと、爪が固いものに触れる。
引っ張り出したそれは、革の鞘に入った古びた短剣だった。
柄には、わずかに翠色に光る石が嵌めこまれている。時代がかった代物だ。
それを手の上に乗せて、レハトはしばらく、その革の古びた風合いに目を落とし続ける。
雨だけが音をたてていた。


それは母の形見だった。
いつだろうか、母親に泣きついたことがあった。
村の子供達にからかわれ、そしられ、喧嘩の果てに家名を名乗れぬ生い立ちと、父の不在を責められた。
悔しく、辛く、切なく、母にそれを訴えた。
慰めや、真実の欠片をちらつかせることで宥めることはできただろう。
だが母がくれたのは、別のものだった。
見せられたのは古びた短剣で、それをまだ小さい手に母は握らせる。

 これをあげる、いざという時、自分の尊厳を守れるように

母が何を言っているか、よく理解はできていなかった。今になって少しだけわかる。
これはかつて、母が自らの尊厳を守るために使われたのだろうか。
その時に誰の血を吸ったのだろうか。
もはや本人に聞くことができぬ以上、全ては闇の中でしかない。
ただ、わからないなりに、その武器が自分のためにあるということは嬉しかった。
いざとなれば、相手をこれで排除すればいい。
己が傷つけられ、尊厳が危うくされた時に使えばいい。
――そう思いながら育ったが、幸いにして使う機会はなかった。だが、城にまで連れてきた。


この王宮は迷路のように見える。誰もかれもが袋小路で、壁相手に喋っているようだ。
手の上の短剣を使う機会はあるのかもしれない。何度かいやな目にもあった。
だが、まだだ。いやな目にあうことくらい、陰からくすくすと笑われることくらい、宴の席で滑稽話のたねにされることくらい、普通だ。普通にあることだ。自分に限らずに。
だから、まだ耐えられる。顔をあげて、自分に課せられたことをやっている間は、己の尊厳は傷つけられはしていないのだ。
扉がノックされるのに、慌てて短剣を服の中に押し込む。
ローニカやサニャに、この刃物のことは知られたくなかった。いいや、誰にも。
こんなちっぽけなものに、自分の尊厳をかけていることなど、誰にも知られたくはなかった。
たかだか刃一つで守れるものなど多くはないと、もうわかっている。
それでも。

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