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主にサークル小麦畑様のゲーム「冠を持つ神の手」の二次創作SS用ブログです。 他にも細かいものを放り込むかもしれません。
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トッズ単品。
 


密偵の過去なんか、たかが知れている。
アネキウスの恵みの届かない暗がりでも、そこに根付くものはいるものだ。
ろくでもない生き方をしてきた自覚はあるし、ろくでもなく死ぬのだろうという予感もある。
小さい頃、同じくらいの歳の連中と一緒に遊んだことはあっただろうか。
まあ、騙し騙され、競い競わされのあれを遊びと呼ぶかどうか、だ。
それでもかつてはそれが普通だと感じていた。「外」を知らないと、人間は「内」が全てと思い込む。
外と触れて、内が全てではないと知る事がいいこととは限らないが。
父と母と兄弟がいて、ひとところに定住して暮らし、人を騙したり傷つける事を「悪」と教わって過ごすのが「普通」なのだと気づいたのは何時だったか。
  
  ああそうか、自分達は違うのだ

そうぼんやりと捉えて、ただそれだけを納得した。明るく光の当たる昼が世界の本来で、自分達が居るのが抜け目のない夜なのだと、アネキウスの威光弱まりし時なのだと知った。
それを飲み込めなかった連中が、どんな目に遭うのかも見てきた。馬鹿な奴らだ。
とにかく生き残って、自分ひとりでもやっていけるようにならなければいけない。そうすれば、少なくとも寝台の傍を横切って、本当に寝ているかどうか確かめる大人の影には悩まされずにすむ。
くだらない試験や、あまり受けたくない仕事もやらなくてすむ。
時々、子供を連れて睦まじく歩く家族を見ては、眩暈のような感覚を覚えたが、それだけのことだ。
関係のない世界だ、関わらないほうが無難。見たくないものには片目を瞑ること。
上手くなったものだと、我ながら思う。そんな自分の生き方はむしろ、他の連中より賢いものだ。
情に煩わされて、足を取られる馬鹿共を山のように見てきたのだから。
せせら笑ってやればいい。普通、の連中を少し上から見下ろしてやればいい。
いかに悪を嫌って正義ぶろうとも、結局は内面は自分とさほど変わるものではないのだ。
そういう風に生きる自分はろくでもない人でなしで、いずれ仕事でへまをして死ぬか、始末されるだろう。
それでいい。それまでは精々、自分勝手に生きるだけだ。

新しい仕事は、なんともはや、自分には荷が勝ちすぎている感は否めない。
子供の監視、ただし場所は王城、しかも相手はいるはずのない第二の寵愛者だ。
早速、現王は未だ成人していない彼を取り込んで、城の中で飼い殺すつもりのようだし。
それを面白く思わない誰かが命じた任務、殺してしまえば楽なのではないか、と思うのがそれが目的ではないのだ。どう転がるかわからない展開だ。本来は流転する運命を、己の導くものにするために自分のような存在は居る。

それが自分の運命を変えるなど、思うはずもなかった。

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