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篭り明け直前女分化レハトと女子勢。
下品トーク。
一月にわたる篭りがようやく終わりつつある。
レハト様は本当にお綺麗に、女らしくなられたとサニャは満足げにその姿を見つめた。
背や手足も伸びて、すらりと美しく、伸びた髪は手入れするのが楽しいほどだ。
体つきは思ったより丸くならなかったと、少々衝撃を受けておられていたが。
分化してすぐはそういうものですよ、とサニャが言うと少し納得したようだった。
「サニャ」
「はいっ、なんでございましょうかっ」
篭りの一番酷い時期を終えて、お茶を飲みながらゆっくりするこの時間はサニャとっては至福である。
だが、レハトの表情は浮かないものだった。もしかしてお茶が渋かったのだろうか。
「……あの、どうかしたのですか?」
「実は……サニャ、聞いていいかな」
「はい、サニャで答えられることならっ」
「その……」
●●●の経験ってある?
サニャの手からぽろりと茶器が落ちかけて、慌てて支えなおした。
レハトの顔は真剣そのものである。●●●、●●●、サニャの顔がかーっとすぐに熱くなった。
「え、え、その……あ、ありませんっ!」
「そうなんだ。そうだよね、結婚してないもんね」
結婚=●●●とは限らないのだが、レハトはそれで納得したらしい。
サニャは赤い顔をべしべしと叩いて落ち着けようとするが、そううまくいかなかった。
「なんでいきなり、そんな事を聞くんですかぁ」
「ご、ごめん。ほら、僕……私? は、近いうちにあるかなって」
「そ、そうですね。ええと……」
そうだった。篭りが明けたらすぐに結婚、となってもおかしくないお立場なのだ。
レハト自身にも心に決めた相手というのがいる。
女の体となって、そういう事が気になり始めたのだろう。これがサニャが篭りを過ごした田舎の篭り部屋などならば、猥談やら、先輩からの助言やらで結構な知識を得られるのだが。
ほぼ一人で篭りの時期を過ごしたレハトにとっては、情報が足りないのだろう。
「えっと」
「……うん」
「サニャ自身にはありませんが、聞くところによる、みたいなお話なら……」
「そ、そうなんだ。いや僕も村とかではある程度聞いたんだけれど」
そわそわとしてから、レハトの顔がいきなり青ざめる。聞いた話、を思い出したのだろう。
「すごく痛いし血が出るって」
「あっ、それはサニャも聞きました。でも、ええと、男性の方が気を遣ってくださればそうでもない、とか」
「そ、そうなんだ。こっちからではどうしようもないのかな」
「サニャには、よくわかりませんっ」
話し合ううちに互いに顔が青くなったり赤くなったりするのがわかる。
レハト様、自分からどうにかしちゃうつもりなんですか?! と思っても流石に聞けない。
二人で顔をつきつけあわせてから、そっと目をそらした。
「いっそ、別の人に聞いてみるとか」
「レハト様、そういうお話をしてくれそうなお友達いらっしゃいますか?」
「サニャのは……いや聞くわけにはいかないか」
「んっと……」
レハトと親しい女性といえば、ユリリエ様とか、文官のモゼーラ様とか?
どちらも恋愛において海千山千の古強者の雰囲気がある。聞いたら結構心に優しい助言をくれるのではないだろうか。
「では、お呼びしてきますね!」
ここは主君のために一肌脱ぐところだと、サニャは気合を入れた。
「それで、この面子ですのね」
「あの……」
「レハト様の為なんです! 他に聞けそうな方がいませんから」
「ご、ごめんね、なんか呼んじゃって」
手をあわあわと振って、ユリリエとモゼーラが並んでいるという妙な光景を見る。
しかもサニャが控えてすらいた。まさにここは女の園である。
「いいですのよ、やはり不安になるものですね。体も心も女になったばかりですから」
「本当はもっときちんとした、教育の過程があればいいのですが」
「あら。教育より実践が大事なのではなくて?」
「正しい知識は何時だって必要だと思います」
「あ、あの、仲良くね」
サニャが淹れてくれたお茶を飲みつつ、レハトはもう一度、意を決して質問をした。
●●●ってどういう感じなのか。
しばし答えを待つような時間を置いてから、まずユリリエが口を開く。
「健気なことですわね、そんなこと殿方にお任せしてもよろしいですのよ」
「そ、そうなの?」
「もっとも、私はその経験そのものはありませんけれど」
「ええと……」
実は未経験、としれっと言ったユリリエに対して、一人孤軍とばかりのモゼーラが顔を赤らめた。
彼女に自然と視線が集まる。
「やっぱり痛い……?」
「い、痛い事もありますが、私の場合はそれほどは……」
「そうなの?」
じりじりと迫るレハト、赤くなりながら興味津々のサニャ、にこにこ笑っているユリリエ。
性教育の経験なんかないモゼーラだ、むしろそういう猥談に参加した経験がない。
こういう場合、何を言えばいいのか。自分の経験を赤裸々に語ればいいのか。
無理です。
「こっ、個人差のあるものですから。ただあまり、急いでする事ではありませんよ」
「ゆっくり、やればいいの?」
「そ、そうですね。あまり焦らず、殿方と呼吸を合わせることが大事です」
「う、うん」
「やはりその、大事なのは愛ですから、精神性です」
ユリリエがすでに笑いをこらえるので限界になっているのがわかる。
サニャなんか、だいたいどういうことなのかわかってるのだろう。
一人レハトだけが真剣な顔だ。どうしろと。
その時、モゼーラはこの場を切り抜ける一番の方法を思いついた。
「わ、私よりも陛下の方が……」
女、既婚者、出産経験あり。
レハトの顔がぱっと輝いた。
「それで我にというわけか」
「うん。そ、その、それでどうだったの?」
「……我にそんな事を聞くとは、おぬしくらいのものだよ」
やれやれ、と肩をすくめてから、リリアノは真剣なレハトの表情を見つめる。これははぐらかさずに、心の傷にならない程度に真実を伝えてやるべきかもしれない。
だが、その前に。
「少し待つがよい」
立ち上がったリリアノは一度部屋の外に出る。同時に何かが倒れたりする音と、慌てて駆け出す音が続いた。
その後で、ゆったりとした足取りでリリアノは戻ってくる。
「何があったの?」
「なに、出歯亀を追い払ってきたまでよ」
きょとんとした顔に、リリアノは笑ってしまった。まあ、それなりに伝えておいたほうが、今まさに逃げていった相手のためにもなるだろう。