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主にサークル小麦畑様のゲーム「冠を持つ神の手」の二次創作SS用ブログです。 他にも細かいものを放り込むかもしれません。
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『ランテの晩餐』で、こうして一日が終わらない。
直前に読んでいたのがアラン・シリトーおよび、シャーウッド・アンダーソンであることは前書きしておく。


この格好のままでいいのかな、変じゃないかと何度もローニカとサニャに聞いた。
その度に大丈夫ですよ、会食や宴席でもないですからとローニカに言われ、よく似合ってるし変なところはないとサニャにも言われた。
それを繰り返してからようやく部屋を出て、待っていたヴァイルと合流する。
昼間、ヴァイルに食事に誘われたのだ。しかもリリアノ陛下と、……タナッセと一緒だとか。
時々そうして食事をすると聞いて思い浮かぶのは、それはおそらく家族の席じゃないのかというもので、実のところ誘いを受けるかどうかを一瞬迷った。
しかしヴァイルには他意はなく、単純に――ヴァイルからすれば日常の一部に自分をちょっと招いてみようというだけだろう。同じ徴を持つからか、彼はひどく僕のことを好いてくれている。
レハトレハトと馴れ馴れしいくらいの好意は、そんな風に扱われたことのない僕からするとまだ慣れない。
でも決して嫌ではないし、ヴァイルはいい奴だし、リリアノ陛下もいい人だ。
タナッセは……まあ、悪い人ではないんだと思う。たぶん。むかつくことをわざわざしてくるけれど。
まさかリリアノ陛下や王息殿下と同じ席で食事をする機会があるなんて、しかも次王候補と一緒にだ。
レハトはこの場合、自分も候補であることは置いておいた。あまり張り合う気もなく、リリアノの言うとおりにそっと慎ましくしているだけのつもりだったからである。ヴァイルはそれを残念がり、タナッセは馬鹿にするが。まあタナッセはどんな道を選ぼうと馬鹿にするだろう。
それでもこうして、同じ場所にいられるなど夢のようだ。
しかもこんな風に、他の家族の食事に招かれるなんてことは実のところ初めてである。
母は徴が発覚することを恐れてか、あまり村の人々と親しくしすぎないようにしていた。
なんだかどきどきするとレハトは話しかけてくるヴァイルの言葉に、やや上の空で頷きながら考える。
うまくやれるといいけれど。礼法はローニカに教えてもらって大分上達しているんだ。
あえていうなら不安なのはタナッセだけど、こちらが大人しくしていればなんとかなるはず……
ならなかった。


レハトは自分の部屋をぼんやりと通り過ぎてしまった事に気づいた。
中に続く回廊の入り口にまで来てしまっていて、大きくため息をつく。
あの後、まずタナッセに噛み付かれた。ヴァイルはちゃんと伝えていなかったらしい。
しかも立ち去ろうとするのを慌てて引き止めたのがまずかったみたいだった、タナッセとヴァイルが喧嘩腰になるのに、レハトはもはやどうしたらいいかわからない。
自分がいなくなればいいのかと思ったのだが、火に油だった。
リリアノがやってきたところで事態は引き継がれ、自分はそのまま廊下に放り出される。
帰るしかないとわかってはいたが、どうも思った以上に落ち込んでいたらしい。回廊から月の光が落ちる中庭を見て、ちょっとだけ、と自分に対してわけのわからない言い訳をしながらそこへ向かった。
別に目的があったわけじゃないのだが、うろうろと歩き回りたい気分だった。
それにも疲れて茂みの中に入ってしゃがみこめば、ため息がまた出てくる。
晩飯を食いはぐれた格好にもなるので、ひどく腹がすいていた。昼間は剣の訓練もしたし。
そもそもレハトが悪いわけではないのだから、部屋に戻ってローニカとサニャに事情を話してしまえばよかったのだ。それで何か用意してもらえばよかっただけの話である。
誘ったのはヴァイルで、タナッセに説明しなかったのはヴァイルで、自分がいるからとごねたのはタナッセで、喧嘩を吹っかけてきたのはタナッセで、いいから帰れと言ったのはリリアノだ。
どこにもレハトが悪い要因はない。家族の諍いに巻き込まれただけだ。
そもそももっとタナッセと自分が仲良くしてればいいのかもしれないが、寄れば厭味目が合えば罵倒という人間と仲良くするのは難しい。むしろタナッセは他人と仲良くする方法を知ってるのだろうか。
多分知らないんじゃないだろうか。
ヴァイルのことだから、この結果を予想できなかったわけがないと思うが。
だとすれば、タナッセを嫌な気分にさせるために招かれたような気がしてしまう。いや、それを承知の上での誘いだっただけだと思うが。
レハトのような他人からすれば、家族の内側などわかりようもない。巻き込まれて災難だった、やれやれ、とすませてしまえばいいだけのことだ。
それでも、レハトはそれを割り切れない自分に気づいて苛立つ。頬を手で覆うようにして俯いた。
少しどきどきしていたのだ。よその家族と一緒に食事をして、自分もまざれるような気分になるかと。
なんでもない会話をして、ごちそうさまでした、と言って今日はいい日だった、と思いながら帰ることができるんじゃないかと。
もっと小さな子供の頃、兄弟や親類が多い家の食事風景を見て、抱いた憧憬に似ている。
家に帰れば一人で食事をすることもあった。母は忙しく厳しく、あまり甘えられなかった。
いつもどこか離れた場所で、一人だけで立って、他を見ているような頼り無い気持ちを思い出してしまう。ぼうっと座っていれば、それだけで段々落ち着かなくなってくる。これ以上ここにいて、すきっぱらを抱えることもない。部屋にいたら、リリアノ陛下に散々叱られたヴァイルとタナッセが謝りに来て、仕切りなおしとかいうことになるかもしれない。そんなわけはないのだが。
隣の茂みが動くのに、目をやれば猫の姿があった。猫はレハトをちらっとだけ見ると、すぐに駆け出して別の茂みの中に入る。音が遠ざかっていく。
その音が消えてからレハトは立ち上がった。


「この間はごめんな」くらい言えばいいのにヴァイルもタナッセも話題には触れてこない、よほど酷い事にあの後なったのだろう。僕の側からそれを言うのも癪だから、黙ってただなかったことにする。勿論なかったことになんてならない、タナッセは苛立っているし、ヴァイルは不満げだ。
……だからといって、陛下にわざわざ顛末や仔細を聞きに行くほどのことでもない。
部屋に戻れば、多少の事情は察したか聞いていたかしたらしいローニカが簡単なものを用意してくれていた。
だからといって彼らに、あったことを全部話して不満を漏らしてすっきりすることもできない。
そんなことされても困るだけだろう。
勉強は楽しくなってきていた。次の御前試合には出るつもりでいる。舞踏会も出てみよう、ダンスはまだ不安だけど。彼らやローニカたち以外にも話しをする相手も見つけた。衛士、文官、神官、商人、まさかの魔術師。
表面をとりつくろって付き合うのは得意だ、あまり深入りはしないようにしないと。また、なんでもない拒否のひとつふたつで、落ち込んだりはしたくない。


次の月の終わり、リリアノに王を目指すと伝えよう。

 

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