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主にサークル小麦畑様のゲーム「冠を持つ神の手」の二次創作SS用ブログです。 他にも細かいものを放り込むかもしれません。
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『湖上の約束』約束後『告白』まで

湖の上で繋いで、約束を交わした指が熱い。
胸はどきどきしっぱなしでうるさく、耳の奥から今にもファンファーレが飛び出しそうだ。
ヴァイルは寝台の上で一人眠れずにごろごろと転がり、あやうく落ちるところだった。
おっと、と止まってから自分がいかに浮かれているかを知っていやになる。
仰向けになってから、手を持ち上げてかざしてみた。いつもと別に変わることはない、自分の体の一部。
なのに、今はやけに特別なものに思えた。レハトと約束をかわしたからか。
レハト。
もう一人の寵愛者。
辺境の村からやってきた、王城にとっての闖入者。レハト。選定印のことを何も知らなかった、王のことも、国のことも、剣のことも、市のことも、貴族のことも、文字のことも、詩のことも、何も知らなかった。
それでも少しずつその力は開花し、教えられたものをそのまま受け取り、伸び始めたレハト。
貧相でよれっとしていて、頼りなげな田舎の子供だったのに、今は自分よりずるずる服をちゃんと着られるレハト。好き嫌いをせずに御飯を食べて、残しているものがあるともったいない、と食べようとするレハト。
中庭の木にとまった緑色の小鳥の名前を知っているレハト。
最初は友達で、一緒にいると楽しくて、遊びに「それはまずいんじゃ」って顔をしながら付き合ってくれるレハト。そういう顔をしてたのに、段々興が乗って一緒にはしゃいでくれるレハト。
それで一緒に怒られてくれるレハト。交渉の勉強だって一緒にやって、御前試合もさせてくれるレハト。
あれ、レハトって俺にすごく甘くない?
幸せな回想に浸っていたヴァイルは、はたと気づいてからしばらく天井を見つめた。
とはいえ、それはすぐに続かない。もし彼が自分に甘いなら、悪いことじゃないはずだ。
レハト。
指を繋いでの祈りの言葉を、重ねるように繰り返してくれた。
約束を、してくれた。
ずっと一緒。
胸がかあっと熱くなり、じんわりと目元にまでそれが上がってくる。
王様になるためにいっぱい諦めて、何かがあるたびに多くを捨ててきた。そうして生きて、この城から出ることもないまま、ただ死ぬんだ。そう思っていた。
でも、レハトは居てくれると言った。約束をした。彼にはそんなことをする必要も義理もないのに。
彼が手を繋いでくれたのは同情からなのか。
それとも友情か、好意か、共感、あるいはヴァイルが見抜けていないだけで、自分を陥れる策略。
一番最後は無いと信じたかった。それに、悪意には聡いつもりだからレハトにそういう心があるなら見抜けるはずだ。
多分それはきっと友情と共感と同情を混ぜたものだろう。
あそこで断るのはそうできることじゃないはず、もしヴァイルがそれで怒ったりしたら? 舟から落とされたら?
もし断りたくても出来ることじゃない。
……わかっていてせがんだのはヴァイルだ。
手の温度が冷えていくような気がして、拳へと変える。そっと枕を抱き込んだ。

「レハトは約束を守ってくれるかな」

今まで、繋いで誓ったのに守ってくれる人はいなかった。
そんな約束はできないと言ったり、どうしても守れないと手は離れてしまった。
人間は一人で生まれて一人で死ぬんだ、だから仕方がない。他人なんだから。そう醒めた目で見送ってきた。
でも、もしレハトが。
布団の中にもぐりこみながら、ヴァイルは息を吐く。
もし、の先を考えるのはやめた。ああ次にレハトと会ったらどんな顔をしよう、とか。そういう楽しいことを考える。
そうでなければ眠れそうになかった。



レハトは手をじっと見つめて息を吐く。
ぼうっと、頬を赤らめさせて、目を潤ませる熱が消えてくれなかった。
暗い湖の上で見た星と、ヴァイルの顔ばかりが頭をよぎる。
寂しそうな目をしていた。
時々ヴァイルはそういう顔をする、その顔を見せてくれる。今にも儚くなってしまいそうな表情だ。
もしかしたら、このまま大人になれないんじゃないかとか、心配になってしまうような。
此処ではない何処かに行きたがっているのに行けないヴァイル、城に繋がれて、王なのに全然自由でも幸福でもなさそうなヴァイル。
自分のことを好いてくれていて、それはきっと、ほかに仲間がいないと思っていた彼からすると自分が同じ徴持ちの子供だからで、決してレハトのことを知った上で好きになったわけじゃない。
出会いはそうだった。あまり仲良くなれないかもしれないと思った。何を求めているか最初はわからなかった。
力なの、ヴァイルが欲しいものは。富はきっと違うだろう、じゃあ何だろう。自由?
この城にずっといるヴァイルが欲しがってはいけない一番のものだ。
それとも、もしかして愛なのか。
レハトが欲しいものは、愛しかない。自由は欲しいけれど、子供の自由なんてそもそもたかがしれたものだ。
そっと頬を触るとひどく熱かった。
今夜は眠れるだろうか。
明日はどうか。
ああ。


レハトはヴァイルを中休みの日に呼び出すことに決めた。
来てくれないと困るなあ、と思いながら。もし来たなら、伝えることは決まっていた。
 

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