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主にサークル小麦畑様のゲーム「冠を持つ神の手」の二次創作SS用ブログです。 他にも細かいものを放り込むかもしれません。
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グレオニー+サニャ対話
グレオニー護衛

空はよく晴れていて、絶好の洗濯日和というところか。青一面の空を、白い雲がいくつかふわふわと横切っていくのを眺めて、グレオニーは少し晴れやかな気分になった。
雨男とそしられるほど、何かあるたびに雨が降るのだがやはり晴れていると気持ちがいい。
風もあたたかく、こんな日は子供の頃にそうしたように、野原に駆け出してごろごろと転がりたいものだ。
勿論グレオニーはいい大人であるし、王城には野原はないし、衛士という仕事もあるのでそれを放り出すわけにはいかないのだが。
そう、しかもその仕事は最近、大躍進といっていい状況にある。
中庭に続く回廊から、高貴な人々が住んでいる塔を見上げた。
もともと城砦であったこの王城は優美さとは無縁のつくりだが、その塔だけは妙に目をひくように思われる。
それは今、そこにある自室で勉強に励んでいる人のためかもしれないが。
もう一人の寵愛者、ありえざるべき、神の選定印を受けた第二の王候補。
グレオニーはその彼に、護衛として抜擢されたのだ。
そうなればいいな、と思わない日は無かったが、まさかそんなことになるとは思っても見なかった。
衛士仲間ではグレオニーが、子供に取り入って「うまくやった」ということになっているが、グレオニーからすれば下心があったことは否定できないもののうまくやれた気は皆無である。
むしろ、よくもまあ自分なんかを護衛にしたものだ。
その護衛の自分が主より離れているのは、老侍従がいる部屋でもっての勉強がはじまるからであり、それから彼が昼の休憩をしてくればいいと提案してくれたからである。
広間で茶でも貰ってこようというわけだが、こんないい天気の日に、部屋で勉強に励んでいる主に対して少しだけ申し訳がなく感じた。

(十四といえば、まだ遊びたい盛りだよなあ)

成人の儀を控え、最後の子供時代としてもっとはしゃいでいる頃である。グレオニーがそんな歳の頃はわりとそうだったし、ヴァイル様だってこれが最後とばかりにふざけているではないか。
だがもう一人の――グレオニーの主であるレハトは、慣れない環境であることに少しでも慣れようというのか、礼儀作法や身だしなみや、交渉術、文字の読み書き、地理と歴史、聖句の暗誦、数学に幾何学、詩学に修辞学、そして剣術と日々のほとんどを修練に費やしていた。
子供時代の最後を勉強漬けで終わらせるとは、なんともいたましいような気分になる。

(とはいえ、それが王様の候補ということなんだろうし)

いたましく思ったところで、グレオニーにはどうする手立てもないのだ。護衛としてあまり口うるさく言わないくらいだろうか。考えながら広間に入りかけたところで、目の前の角を曲がってくる小さい人影に気づくのが遅れた。

「ひゃっ!」
「うわっ」

あやうくぶつかりかけて、お互いに頓狂な声をあげてから立ち止まる。
目を白黒させている、金髪の侍従が目に入った。レハトの部屋付であるサニャだ。

「サニャちゃん」
「グレオニーさん、もう、ちゃんと前見て歩いてくださいよっ」
「ご、ごめんな」

ぷりぷりと言われてグレオニーはたじろぐ。前方不注意はお互い様だろうに、とは言い出せない。
サニャは両手に抱えていた花の束を、よいしょと持ち直した。
赤い小さな花がたくさんついた、すっとした緑の茎。花には疎いグレオニーだが、それでも目を引く美しい姿をしているとすぐわかる。

「花?」
「あ、レハト様のお部屋に飾ろうと思って」
「そっか、きれいだなあ、それ」
「えへへ。咲いたら一番にくれるように、庭師さんに頼んでおいたの」

嬉しそうに、どことなく誇らしそうにサニャは目を細めて自分の地道な努力の成果を抱きしめた。
かわいらしいなあと思いながら、レハトのことを、ただの部屋付侍従が主人に抱くようにではなく、もっと親密さを感じているのだろうとすぐ見て取れる様子にグレオニーはためらいに似た気持ちを抱く。
こんなにあけすけに好意をあらわにしていいものだろうか、敵意よりはましなのはわかっているが。
主人と僕という関係を考えれば――いや、グレオニーにもわかっている。
レハトに対すると、それを忘れてしまいそうになる自分がいるのだ。いわゆる貴族然とはしていないからか、接していて気楽だし、まるで弟をかわいがっているような気持ちになる。
当人もそちらのほうがいいとばかり、懐いてくれることだし。

「レハト様、喜んでくれるかな」
「絶対喜ぶと思うなー、おれは」
「ホント?」
「ああ、ホントだって」

顔を見合って、笑いあうとサニャは羽でも生えたような心地になった。ふわふわした足元のままで部屋にかけあがって、レハトの部屋に早くこの花を生けよう。
とまで思ってから、はたと気づいたようにグレオニーを見る。

「あれ、グレオニーさんでも、なんでこんなところに?」
「休憩してこいって言われて」
「ふーん」
「レハト様は勉強頑張ってるのに、おれだけ休んでていいのかわからないけどさ」
「あ……」

もどかしいような気持ちは、サニャだってわかる。毎日詰め込むように城での生活を注ぎ込まれ、レハト本人は涼しい顔をしているが、きつくないわけはないのだ。
その日々を少しでも和やかにしようと、花を飾ったり、お茶をいれたり……
サニャははっとした。

「じゃあ、グレオニーさんにお願いしちゃおう」
「え?」



勉強をひとまずここまで、と言われて休憩の時間がやってくる。レハトは腕をぐるぐるまわして肩をほぐせば、窓の外の良い天気にため息をついた。
ああ、外に出たい。そんな風に思うが、今日は一日びっしりと勉強だ。これが終われば聖句についての知識を詰め込まれることになる。剣の訓練を入れておけばよかった。
ぼうっと窓の外を見ていれば、ちりん、と鈴が鳴る。

「レハト様」

隣の部屋からサニャの声がする。入って、と促せば赤い花を生けた花瓶を持った彼女がやってきた。
鮮やかな色彩と甘い匂いが、レハトの注意をひく。

「今日咲いたばかりの垂筒花をわけてもらいました、お部屋にお飾りしますね」

そっとテーブルに花瓶を置いてから、テーブルクロスを直すのにレハトは笑った。花は気づかないうちに変えてもらっていることが多いのに、こうして来てくれるのは珍しい。
花を愛でていれば時間が過ぎるのも早いかと席を立ったところで、大柄な体が戸をくぐってくるのに気づいた。

「グレオニー?」
「レハト様、ええと、お茶の用意をですね」
「……グレオニーが?」
「すいません、いけなかったでしょうか」

いやいけないとかじゃないけれど。
盆の上に茶器と焼き菓子を乗せて、慣れない仕事に背を丸めているグレオニーと、なにやらにこにこと笑っているサニャと。両方を見比べて、レハトは外出できないことによる塞ぎの虫など忘れた顔で笑った。

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